弊社はテレビ番組を制作しています。店舗や企業を取り上げることが多いのですが、下取材の際、初めて先方に連絡したときに、「番組に出るのに、費用はかかるんですか?」と質問されることがあります。
また、個人的な集まりで、経営者や広報を担当している方から、「あの番組に出たいんだけど、いくら出せば取り上げてくれるのか?」と聞かれることがあります。
テレビに取り上げてもらうにはお金がかかる。
テレビにはお金を出せば、出られる。
と思われている節があります。
実際にはどうなのか、解説していきます。
新聞に当てはめてみると・・
テレビではわかりづらいので、新聞でなぞって説明してみましょう。
新聞の構成は、①記事 ②広告 ③記事広告 の3つがあります。
これをテレビで当てはめると、
①記事に当てはまるところが、番組
②広告に当てはまるところが、CM
③記事広告に当てはまるところが、パブリシティ枠
になります。それぞれ、お金視点で解説すると・・
①番組
新聞の記事は、新聞社が取材をして記事を書きます。新聞社と記事に出てくる会社とは金銭のやりとりはありません。あれば公平で公正な取材ができません。番組も同じで、テレビ局と番組に取り上げられている人や関係者との間に、金銭のやりとりはありません。
②CM
新聞の広告欄にあたるところが、テレビではCM枠です。企業や団体が枠を購入して、そこで告知したいことを流します。ちなみにCMの時間はテレビCMは週ごとの総放送時間の18%以内、という放送法の規定があります。ざっくりですが、60分番組の場合、10分程度がCMに割り振られています。CMは15秒と30秒が一般的なので1時間番組に約40本のCMが流れています。
③パブリシティ枠
パブリシティ枠は、テレビ番組の中にあるPRのコーナーにあたります。例えば、朝の時間帯の情報ワイド番組や深夜番組に見られます。60秒程度でアナウンサーやレギュラーのタレントが紹介してくれたり、あらかじめ作成した映像を流したりしています。
放送内容は、企業側の意向を取り入れて作られます。地方局の番組ではよく見られます。
新聞であれば、枠の隅に【記事広告】あるいは【広告】と書かれています。テレビなら提供クレジットが流れます。
この枠は、広告やCMとセットだったり、オプションとして販売されています。
パブリシティ枠に近いもので、3分程度のミニ番組があります。番組とCM合わせて5分まるまるを一社提供している枠です。番組は企業イメージやコンセプトに沿っており、それにCMを組み合わせることで、企業と商品の認知をはかっています。
テレビが無料で視聴できるのは・・
テレビは無料で視聴できますし、新聞は有料ですが非常に安価で提供されているのは、広告やCM枠を企業や団体が購入して、スポンサーとなっているからです。
同じ紙面に記事と広告と記事広告が、テレビなら番組とCMが交互に流れるため、視聴者にはその違いが分かりづらいかもしれません。
さて、テレビCM枠はどこで販売されているのでしょうか?
広告代理店
こうした枠は、新聞社やテレビ局から直接購入することができません。広告枠やCM枠は広告代理店を通じて購入します。広告代理店はクライアントの希望を聞き取って、メディア露出のプランニングをたてて、枠を購入。そこに掲載する内容物も企画し、制作します。テレビ局はCMを出す会社の審査もしますし、内容物についての審査もあります。その審査を通らないことにはCMを流すことができません。
企業が狙い通りの内容で放送するために、広告代理店が代理で放送局と交渉します。
PR会社
広告代理店と一見、似ている会社にPR会社があります。PR会社は、自社の広報に代わり、メディアを通じて自社や商品を消費者に認知してもらう会社です。その一環として、テレビ番組に取り上げてもらえるように、各局各番組に積極的にアプローチすることがあります。番組によって趣旨やテーマがそれぞれあるので、それに合わせてリリースを送ったり、新発売やリニューアルや業態変更に合わせて、こういうシーンが撮れます、協力できます、と発信します。こうした活動によって、記事掲載や番組出演が決まったら成功報酬としていつもよりも多い額を支払う場合があります。
この場合、企業はPR会社へ料金を払うのであって、取り上げたテレビ局への支払いはありません。
こうした代行の会社との連携で新聞やテレビに出ることがあります。複雑な経路があるにもかかわらず、この紙面に、あるいはあの番組に出るのにいくらかかった、という話が人づてに広まってしまい、テレビに出るのにはお金がかかる、いくら支払えばテレビに出られると、単純化されて認識している人が多いのかもしれません。
ちなみに、「〇〇万円であの番組に取り上げられます」という手法で企業と契約する会社が見受けられましたが、これは番組制作サイドからするとご法度です。番組のホームぺージにも注意喚起されていますので、かなり減りましたが。
番組制作者からのアプローチでの取材は無料
テレビ番組を名乗る制作者から、取材についての連絡があった場合は、料金の発生はありません。テレビは公平かつ公正な立場で取材先を探しているので、企画に合うところを積極的に探しています。もし、制作者から料金についての話が出たら、本当にテレビ番組の制作者かどうか疑ってみましょう。疑わしいときは、即答せず、紙面やメールで番組についての概要と料金の根拠を教えてもらうのがいいと思います。
ネット番組では有料のときも
最近では、ネット番組も増えてきました。ネットで展開しているメディアもあります。その場合、有料のことがあります。掲載されている人たちがPRするためのメディアという場合があるからです。視聴者は無料で見れるし、CMもなく、こうういうフォーマットでプロが撮影し編集しますよ、という商材だったりします。この場合、制作してくれた映像が誰に見てもらえるのか、映像は二次使用できるのかなどを検討するとメリットがある場合も。
取材について問い合せがあった場合に、確認しておくこと
制作者から連絡してきたら、番組や撮影について説明してくれるはずです。ただ、制作の経験が浅い人やことばが足りない人も中にはいます。どういう形で取り上げられるのか不安なときは、下記のことを確認しておきましょう。
□どこで放送されるのか?テレビ局名や媒体名
□番組名
□担当者(いま、連絡してきている人)
□担当者の連絡先
□どういう企画で取り上げるのか
□撮影日
□放送日
□どのくらいの時間、露出するのか
□どのくらい撮影にかかるのか?
□用意するべきこと、もの
テレビ番組は、企画の立ち上がりから放送まで、約2,3か月かかります。期間もかかりますし、工程も多いのです。テレビで取り上げている店は、何軒もの候補の中から選定されています。もし、番組から連絡があれば、詳しく話を聞いてみてはいかがでしょうか。
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